第2章 中編
「…ユーリ、行くぞ」
ローは呆然としているユーリを暫く見ていたが、痺れを切らしたのかそう言って彼女の手を掴んだ。
時間帯にしてもう夜遅かったので、少しでも早く礼拝堂へ向かいたかった。
「ちょっと待った」
だが、それも男の言葉によって邪魔をされた。
ローが掴んでいる方と逆の手を掴んだ金髪の男。
ユーリをそのまま引き寄せようとする男に、ローの機嫌は急降下していった。
「…何の用だ」
ローはユーリの手を掴んだまま彼を睨んだ。
ユーリはそんな二人に挟まれて、少し慌てているようだった。
「言ったでしょ?取引したって」
だから、彼女の生気を貰うよ。
そう言った男の言葉に、ローは目を見張りユーリを見た。
「え、えっと…」
ユーリは少し困った様子で、視線を逸らしながらローに事情の経緯を話す。
気のせいか、掴まれていた手に力を込められた。
そして重い沈黙が流れること少し。
ユーリはすぐ終わるからと言って、ローに捕まれていた手をそっと外した。
そして男に向き合い覚悟を決める。
背後にいるローがどんな表情をしているのか、何となく怖くて見れなかった。
「さて、どの方法がいいかな?俺はどれでもいいから好きなの選ばせてあげるよ」
ユーリが約束を守ってくれることに気をよくしたのか、男は楽しそうに口元を歪ませた。
そして男の言葉にユーリは困惑する。
どれでもいいって、最近の霊はキスとか…そういった行為は誰とでも平気で出来るものなのか?
ローと言い目の前の男と言い、仮にもイケメンで女に困るはずがないのに一体何を考えているのか分からない。
ユーリはそっとため息を吐くと、血を吸う方法でお願いした。