第2章 中編
ユーリは男に彼女を助けて欲しいと頼んだが、もう手遅れだと言われた。
その言葉に絶望の表情を浮かべるユーリ。
ユーリは彼女の元に座り込むと、そっとその手を握った。
「…あなたにも、愛する人が見つかるといいわね」
命を賭けてもいいと思える、そんな人に。
彼女はそう幸せそうに微笑むと、静かに息を引き取った。
ユーリは彼女の手を強く握りしめた。
名前も知らないこの人は、愛する人の為に犠牲になったのだ。
「……」
ユーリは言葉が出てこなかった。そして男はそんなユーリを静かに見ていた。
辺りが静寂に包まれた。
そしてどれくらい経っただろうか、ローが男を捕まえて戻ってきた。
「ここまでしてやったんだ。後始末はてめぇでしろ」
ローはそういうと、ボロボロになった男を放り投げた。
男はまだ生きており、辛うじてうめき声を上げる。
ローは男を睨みつけていた。
国王の霊は最初から犠牲者を助ける方法を知っていたのだ。
にもかかわらず今まで放置していた。
ローはそれが気に入らなかった。
「なんか誤解してそうだから言うけど、俺一人じゃここの人は助けられなかったよ」
男はやれやれと言ってローに弁解をしていた。
今回はロー達の侵入と魔物が集まったお陰で、犠牲者のほとんどを外に出すことができた。
狭い建物内でちまちま動き回っても、相手も数が多いので殺されて終わりだろう。
「……マリア」
ローと霊が睨み合っていると、ふと地面に倒れ込んでいた男が息耐えた彼女の元へ這いつくばっていった。
そして静かに彼女の頬に手を触れる。
「……ーー」
男が何かを言っていたようだが、それを聞き取ることは出来なかった。
そして男は悲しそう笑うと、そのまま気を失った。