第2章 中編
「あとはてめぇだけだ」
ローは男に刀を向けた。
全ての元凶であるこの男を、生かしておくわけにはいかない。
ローに刀を向けられているのに、男は未だに唖然としていた。
戦意喪失。まさにその言葉が相応しかった。
ローは憐れな男だと思い、刀を振りかざす。
ザッ!
鳴り響いた鈍い音。
そして飛び散った大量の血。
男の目の前には、青い髪の女性が立っていた。
「…へぇ、俺の魔力を受けても立っていられる子が残ってたんだ」
金髪の男が関心したように呟く。
ローに刀で貫かれた女性は、大量の血を吐くとその場に倒れ込んだ。
その姿を見て我に返った男。
「…ははっ、やっぱりお前は最高だよ。最後の最後まで役に立つとは」
男はそう言うと、魔法陣を発動しその場から消えた。
「…逃がすわけねぇだろ」
地に倒れた女性をローは少し驚いた表情で見ていたが、すぐに男の後を追った。
「…な、なんで」
一部始終を見ていたユーリは、慌てて女性の元へ駆け寄った。
血を吐き続ける彼女の眼は虚ろで、何も映してなかった。
「…あの人、本当は凄く優しい人だったの」
ユーリの言葉に、女性はまるで独り言のように話し出した。
誰かを助けたいと思う気持ちを強く持っていた彼。
だけど、その方向性は間違っていたようね。
女性は悲しげに笑った。
2人は恋人同士だった。
だけど、研究に取り憑かれてしまった彼は完全に別人へと変わった。
誰かを助けるためには犠牲者は必要だ。
そう繰り返し言葉にする彼に、彼女も賛同し力になりたいと思っいた。
だけど、結局は利用されるだけされて終わってしまった。
「…こんな結末だけど、後悔はしてないわ」
彼の研究に賛同する者はいなかった。
だけど、たった1人ぼっちの彼を、彼女は見捨てることは出来なかった。
本当は何が正しかったなんて、今でも分からない。
だけど、彼女は彼を愛していた。
それだけは、今でも変わらなかった。