第1章 前編
数100年に一度この世界には、闇の力を持つ魔物が現れる。
普通の魔物と違うそれは、ただの魔法では倒せない。
過去にその魔物が現れてから、だいぶ時が経つと言っていたが、まさか今の時代に当たるとは思ってなかった。
「おい、これって伝説の刀なんだろ!?これに選ばれたら英雄になれるんだよな!?」
そして何か興奮したように叫んだ生徒を始めとして、皆その刀に群がっていった。
だけど、引き抜こうにもビクともせず、次第には近づこうものなら弾き飛ばされるようになった。
「お前たち、落ち着かないか。まだその刀が本物なのか判定する必要が…」
教師がそう言って生徒を咎めるが、儀式の間は混乱しており誰も話を聞こうとしない。
皆、刀を抜こうとして躍起になっていた。
ーーーうぜぇ
ユーリはその騒ぎを離れた所から見ていると、不意に声が聞こえたような気がした。
その瞬間、周りの生徒たちの動きが止まった。
「え?なんだこれ、身体が動かない…?」
身動きが出来なくなって困惑する生徒たち。
ユーリは次々と状況が変わる中、混乱する頭でその様子を見守っていた。
ーーーーおまえだろ、さっさとこっちに来い
そして再び聞こえてきたその声。
ユーリの身体は、己の意に反して動き出した。
「え?ちょ、まって」
ユーリはゆっくりとその刀の元へ歩みを進める。
その様子を驚いたような表情で見ている生徒や先生達。
思い通りにならないその身体は、刀の前まで来ると止まった。
そしてユーリの手が勝手に刀の柄を掴む。
その瞬間、凄まじい光が辺りを包んだ。