第1章 前編
「それでは、これを持って選定を終了する」
ユーリが唖然と立ち尽くしていると、何時の間にか儀式が終っていた。
教師のその言葉を最後に、周りの皆は杖を見せて自慢し合っていた。
ユーリはふらつく足取りで壁側へ向かった。
次の指示はまだされていないので、ここを離れるわけにはいかない。
ユーリは泣きそうになるのを耐えて、その場に俯いていた。
それを見てクスクスと笑っている同僚達。
「実に無駄な1年を過ごしたわね?下層の人間がここに来ること事態間違ってるのよ。いい気味だわ」
同僚の何気ない言葉に、周りの人々も笑っていた。
ユーリは握っていた手に力を込めて、じっと耐えていた。
「おい、なんだあれ?」
それからどれくらい経っただろうか。
ふと、周りにいた生徒たちがざわつき始めた。
その声にユーリが顔を上げると、宙に浮かぶ禍々しい色をした光。
その光は次第に形を変えていき、一本の刀となった。
ガンッ!!
そして祭壇の中央に深々と突き刺さったその大きな刀。
その様子を周りの生徒たちは、気味悪がって遠目で見ていた。
「先生、もしかしてこれって…」
そしてその様子を見ていた教師たちが何かに気づいたのか、集まって何かを話しているようだった。
闇の脅威が目覚めた時、一本の刀が現れて英雄を選定する。
それは、この学校に昔から伝わる言い伝えだった。