第2章 中編
「あぁ、そうだな。確かに犠牲が必要な世の中でもある」
沈黙が暫く続いたかと思うと、徐にローが口を開いた。
まさか男の言葉を肯定するとは。
ユーリは困惑した表情で再び視線をローへと向けた。
「だが、おれは暇じゃねぇんだ。こいつがここの連中を助けたいと言っている以上、それに従う。邪魔をするなら容赦しねぇ」
ローの言葉にユーリは目を見張った。
なぜだろう、初めて主としてというか、ローがユーリの願いを聞いてくれた気がする。
今まで好き勝手にされ、自由奔放だったのに一体どういう風の吹き回しなのだろうか。
もしかして早く礼拝堂に行きたいだけか?
彼ならありえそうだ。
ユーリは辿り着いた答えに、嬉しさ反面微妙な気持ちになった。
「っく、ははは!」
そしてローの言葉に、男は声を上げて笑った。
「流石英霊様は言うことが違いますね。正直、あなたは犠牲者のことなどどうでもいいのでしょう?用は早く礼拝堂に行きたいだけなのでは?」
ユーリの思ってることを代弁してくれた男。
中々頭のキレる奴だ。
男からすれば礼拝堂には自由に行って貰って構わないが、ローの主が先に犠牲者の解放を望んでいる以上、そうはいかないのだろう。
2人の間で再びにらみ合いが続いた。
「分かってるじゃねぇか。そういうことだ」
だからここは破壊させてもらう。
ローの言葉に男は大きくため息を吐いた。
「どうやら話し合いをしても無駄のようですね」
男はそういうと魔法陣が書かれた片手を上げた。
その瞬間周りに集まり始めた、誘拐された人たち。
どうやら何人かは建物内に残っていたようだ。