第2章 中編
目の前の大きな扉を、ローは何の躊躇もなく開け放った。
そして扉の先にいたのは、一人の若い男。
彼はイスに座っており少し驚いた表情をしたが、ローを見るとすぐに口元に笑みを浮かべた。
「これはこれは、かの有名な英霊様がこんな場所に何の用で?」
机に肘をつき余裕の笑みを浮かべているこの男は、ローが怖くないのだろうか。
ユーリはローから降ろされると、二人の睨み合いに軽く青ざめていた。
「ここの建物を破壊しにきただけだ」
なんとも単刀直入に用件を述べるロー。
その言葉に、男は声を上げて笑っていた。
「まさか国王の差し金ですか?私の研究が理解できないとはなんとも悲しいものですね」
男は大げさにため息を吐いた。
「国王じゃねぇよ。取り合えず誘拐された奴らを返してもらおうか」
あくまで一方的に要求を述べるローに、男は笑みを消した。
「…まぁ誰の差し金でもいいのですが。私のやってることはただの慈善活動ですよ?現に魔物に困っている人から依頼を受ければ助けに行きますし」
「…でも、その為に犠牲になっている人もいますよね?それは本当に正しいことでしょうか?」
2人のやり取りを見守っていたユーリだが、思わず口をはさんでしまった。
男の視線がユーリへと向けられる。
「誰かが犠牲にならないと、やっていけない世の中なのですよ。それとも、力のない者は魔物に黙って殺されろと言うのですか?」
男のその言葉に、ユーリの言葉が詰まった。
確かに男の言い分も分かるが、果たしてそれは正しいのか?
ユーリはローへと視線を送るが、彼は口を閉じたまま何かを考えているようだった。
彼が何を考えているのかまったく読めない。
否定も肯定もしないローに、ユーリは少しだけ不安になった。