第2章 中編
「…何か用?」
ユーリが彼女を見ていると、突然彼女が目覚めた。
「え!?…あ、あの…」
まさか起きていると思っていなかったユーリは言葉に詰まった。
だけど慌ててここにいる人を助けに来た旨を彼女に説明した。
「…そう」
ユーリの言葉にたいして興味を示さない彼女。
てっきり助けを求めてくるかと思ったが、彼女のリアクションは薄かった。
ユーリは予想していた反応と違ったので、どうしようと頭を悩ませた。
まさかここにいる人は望んでこの場にいるのか?
ありえないと思ったが一瞬その考えが頭を過る。
「…私はいいわ。でも、他の人はお願いしようかしら」
青い髪の女性はゆっくりと起き上がると、静かにユーリを見た。
赤い瞳、首に書かれた魔法陣。
ユーリは一体どういうことなのか、詳しく彼女に話を聞いた。
すると、やはりここに連れてこられた人達は誘拐された人で間違いなかった。
目的も予想通りで、人工の杖を使えるように身体を改造するためだ。
今更連れ帰った所でもう手遅れかもしれないけど。
彼女はそう付け加えて言った。
「あなたは逃げないんですか?」
例え彼らを元に戻す方法が分からなくても、取り合えずはここから逃げ出さないと始まらない。
何故彼女はこの場に留まろうとしているのか。
ユーリは意味が分からず彼女の真意を探った。
「…あなたは、愛する人の為に犠牲になれる?」
暫く沈黙が続いたかと思うと、唐突にそう聞かれた。
「…え?」
愛する人の為に犠牲?
なぜ今その話を。
ユーリは首を傾げた。
そんなユーリをじっと見ている彼女。
難しい表情で考え込んでいるユーリの様子を見ていた彼女は、フッと笑った。
「…あなたも、きっと何時か分かる日が来るわ」
まだ若いし、恋とはまだ無縁そうだから何時になるか分からないけど。
綺麗な笑顔をユーリへ向ける彼女。
全く話の見えない言葉を続ける彼女に、ユーリの頭は更に混乱していた。
恋?犠牲?この女の人は誰かの為にこの場に留まるという事なのか?
ユーリは更に難しい表情を作り考え込んだ。