第2章 中編
ユーリの視界に入ったのは、装置に備え付けられている台のような場所に横たわっている女の人だった。
沢山の管に繋がれている彼女は眠っているのか、意識がないのか分からないが瞳を閉じたまま動く気配はない。
そして暫くすると、複数の男が彼女に近づいてきた。
「…今回は損傷が激しいな。稀にない傑作品だから…」
距離が少し離れているため、僅かにしか彼らの声が聞こえてこなかった。
傑作品?損傷?彼女は一体……
ユーリはなるべくばれない様に彼らの話に耳を傾けていると、突然女性の悲鳴が上がった。
驚いたユーリは身体をビクつかせたが、すぐに視線を彼女に向けた。
何やら1人の男の人が、彼女の魔法陣に触れているようだった。
いや、触れているのではない。
注射器のようなものを、あの魔法陣の穴に入れているのが見えた。
赤い液体を入れられている彼女は、繋がれているため身動きが出来ない。
見開かれた瞳が赤く染まっているように見えた。
「…っ」
ユーリはそんな様子を息を呑んでみていた。
本当は直ぐにでもこの通気口を突き破って止めさせたいが、そうしたらローにも迷惑が掛かる。
ユーリは無力な自分を呪った。
そしてどれくらい経っただろうか、女性の悲鳴がなくなり、男達も部屋から出て行った。
時間帯にして日もだいぶ暮れている。
ユーリは一瞬迷ったが、通気口を開けて実験室の中に入った。
なるべく音をたてないように彼女に近づくユーリ。
緊張の為か心音が煩く鳴り響く。
ユーリ軽く息を吐くと、そっと彼女を覗き込んでみた。
彼女の瞳は再び閉じられたままだった。