第2章 中編
ユーリは女性に礼を言うと、ずっと待っていたローに先ほどの話をした。
ユーリの話にたいして興味を示さないロー。
先ほどの女性はその施設に行く必要はないと言ってくれたが、ユーリはどうしてもこの事件を見過ごしたくなかった。
だけど、ユーリは無力なのでローの力が必要になる。
だから恐る恐る彼に意見を聞いてみると、好きにしろと言われた。
一応主の意見は聞いてくれるらしい。
まだ不機嫌そうだが、取り合えずユーリは安堵の息を漏らしローにお礼を言った。
そして2人は日が暮れる前に終わらせるため、このまま直ぐに礼拝堂と施設に向かうことにした。
「…ロー、私の気のせいなら申し訳ないんだけど、何か怒ってる?」
森の中を、魔物を薙ぎ払いながらさっさと進んでいくローに、ユーリは背後から恐る恐る声を掛けた。
「…別に怒ってねぇ」
素っ気なく返されたその言葉に、嘘だろおまえとユーリは内心突っ込みを入れた。
一緒に過ごしてきたから、彼の些細な変化でも分かってしまう。
ローの周囲に漂う不機嫌オーラを見て、ユーリはどうしたものかと頭を悩ませた。
(…何やってんだおれは)
ローは魔物の相手をしながら、頭の中では別のことを考えていた。
ユーリの生気を別の奴が貰ったくらいで、ローに何か影響があるわけでもない。
現にローは一度、違う女性から魔力を貰っているのだから。
(…この傾向は、まずいな)
自分自身でも自覚し始めている、独占欲に似た感情。
そして…
何かとローの為にと思ってる彼女に、情が移り始めている。
ローはそっとため息を吐くと、気持ちを切り替えた。
ユーリはローが選んだ主で、それ以上でも以下でもない。
闇の魔物を倒すその時まで、彼女を守らなければならない。
本当は主従関係で言うなら主であるユーリが上なので従う必要もあるが、生憎ローは誰かに命令されるのが嫌いだ。
まぁローに命令する気配など微塵も感じないから別にいいのだが。
ユーリへそっと視線を送ると、彼女も難しい表情で何かを考え込んでいるようだった。