第1章 前編
目の前では、色んな杖に選ばれている生徒がいる。
杖に宿る魂が、イケメンだったり美女だったりで喜ぶ人。
変な動物や地味な魂で落ち込む人。
強力な力を持つ杖で喜ぶ人と様々いた。
「ユーリ、こちらへ」
そして遂にユーリの順番が来た。
周囲から向けられる視線を見ないようにしながら、祭壇へあがる。
目の前には、井戸のようなものがあった。
その中に手を入れると、杖を掴むことができる。
ユーリは大きく深呼吸すると、ゆっくりその水の中に手を入れた。
「……?」
ユーリが手を入れて早数分。
まったく杖を掴める気配がない。
ユーリが困惑した表情で目の前の教師へ視線を送ると、彼はため息を吐いていた。
「やはりおまえは才能がないようだな。さっさと降りろ、次の順番が控えてる」
教師は冷たくそう言い放つと、ユーリの手を掴み水から遠ざけた。
「そ、そんな!待ってください!もう一回すればきっと…!」
ユーリは祭壇から引きずり降ろされた。
もう一度チャンスを貰おうとするが、まるで話を聞いてくれない。
もうすでに、次の生徒が杖を掴んでいる姿が目に映る。
ユーリは目の前が真っ暗になる感覚に陥った。
折角母が、命をかけてこの学校に通わせてくれたのに、これでは死んだ母に顔向けが出来ない。
杖から選ばれないと言う事は、このまま退学になるのだろうか。
このような現象は珍しい。
過去に一回だけ似たようなことがあったと聞いたことがあるが、まさか自分がそれに当てはまるとは思っていなかった。
ユーリは絶望した表情で、暫くその場に立ち尽くしていた。