第2章 中編
「…何の真似?」
ユーリが男から視線を逸らすと、目の前の男から不機嫌そうな声が聞こえてきた。
「もういい。礼拝堂は勝手に行く」
恐る恐る視線を向ければ、男に剣を向けてるローの姿があった。
よく分からないが、2人の間でバチバチと火花が散っている。
「別にいいけど、あの周辺、厄介な奴らがいるよ?別に彼女の生気を少し貰ってもいいんじゃない?」
どうやら礼拝堂の近くに、族とまではいかないが厄介な集団がいるようだ。
それを国の護衛と、権力、案内なしに突破するのは厳しいと、暗に男が言葉に含ませてきた。
「関係ねぇよ。邪魔する奴は全て排除するまでだ」
淡々とした表情で言ってるローだが、機嫌は相変わらず悪そうだ。
「…ふーん、あの英雄様がそこまでして彼女の力を取られたくないんだ?」
ローの行動をどう取ったのか、男は何かを考え込んでいるようだった。
男の視線の先にはユーリがいた。
「…おい、さっさと行くぞ」
そんな男の言葉にローは眉をひそめると、ユーリの手を掴み城を後にした。
なんだかよく分からない内に引きずられるように連れていかれるユーリ。
そんなユーリへ男は、また機会があれば考えておいてねと、笑顔を向けてきた。
(…確かに生気を取られるのには抵抗あるけど、なぜローが代わりに断ってくれたんだ?)
ユーリとしては助かったが、ローの行動に首を傾げた。
どちらかと言えばローには被害はないのだから、関係ないだろうに。
(それに私の生気って美味しいって感覚なの?)
男から言われた美味しそうな香りという言葉。
ローからは感想等一切言われたことないが、彼も何かしら感じているのだろうか。
ユーリはズルズルと引きづられながら、まだまだ分からないことばかりだと、そっとため息を吐いたのだった。