第2章 中編
「…で、おまえがやりたいことはないのか?」
そして漸く口づけから解放されたかと思えば、再び先ほどの質問をされた。
「…だ、だから私よりも…」
ユーリは息を荒げながら先ほどと同じように解答すると、なぜだろうか、ローは少し笑ったような気がした。
初めて見る彼の笑み。
ユーリは茫然としていると、突然ベットに押し倒された。
「そうか、おまえが言わないならこのままおれがやりたいことを続けるぞ」
次は3つ目の魔力の補充のやり方で。
口元を吊り上げて笑っているロー。
先ほど見せた笑みよりも明らかに悪意のある笑みに、ユーリは軽く顔を引きつらせた。
「そ、そうだ!私、海を見てみたいんです!!」
ユーリを押し倒し真上から見下ろしているローを慌てて押しのけると、漸く自分のやりたいことを話した。
意外にも簡単に離れてくれたロー。
舌打ちが聞こえた気もするが、聞かなかったことにしよう。
「…海だと?」
ローはユーリと同じようにベットの淵に座ると、話の続きを促してきた。
「…はい、私は海を見たことがないんです」
スラム街育ちのユーリは海に行く機会なんてなかった。
生まれた場所から遠かったこともあるし、この魔法学校からも離れてると聞く。
噂で聞く海は潮の香と波の音、そして綺麗な青色をしているという。
きっと、先ほどのローの瞳の様に綺麗な色をしているのだろう。
「…そうか」
自分からユーリの願いを聞いておきながら、ローの反応は相変わらず薄かった。
そして何かを考え込んでいたかと思えば、今日はもう寝ろと言ってさっさと鞘の中に戻っていった。
…一体何なんだ。
相変わらず自由な彼にユーリは暫し唖然としていたが、気にしたら負けだと思うことにした。
ローに関してはまだ分からないことの方が多い。
だけど一緒に過ごしていくうちに、少しだけ彼に近づけてるような気がした。