第2章 中編
「それならば私の魔力を貰ってください。私の血筋は代々…」
「いらねぇ。こいつだけで十分だ」
王女の提案を、言葉を遮って断るとローは再び歩き始めた。
それをどこか納得の出来ない表情で見ている王女。
ユーリは終始彼女から睨まれていた。
「…おい、着いたぞ」
そしてユーリは漸く降ろされると、目の前に祭壇のようなものがあった。
着いたと言って降ろされたが、どうすればいいんだ。
本当に祈るフリだけでいいのか?
ユーリが困った表情でローを見るが、彼は相変わらずの反応だ。
だから仕方なく悶々と考え込んでいたのが、突然祭壇から赤い炎が上がった。
「…え?」
ユーリは突然のことに驚き一歩後ずさったが、背後にはローがいるので叶わなかった。
そして炎はやがて一つの丸い形になり、ユーリの中へと吸い込まれていった。
「……っ!」
突然走った胸の痛みに思わずユーリの身体がふらついたが、ローが支えてくれた。
「…これで契約が1つ完了した」
ローはユーリの首筋にある魔法陣を撫でながらそう言った。
ユーリからは見えないが、魔法陣の一部に赤い色が宿ったのだろう。
ローはまだ痛がっているユーリを再び抱え込むと、能力を発動した。
「…帰り道の魔物はある程度片づけてやるが、死にたくないなら早く城に戻れ」
ローはそれだけ言うと、その場から消え去った。
その様子を唖然とした表情で見ていた王女や護衛の人たち。
だがすぐに慌ただしくなり、急いで城に戻ることになった。
「……あの女…」
周りが慌ただしく動いている中、王女の声が静かに響き渡っていた。
それはまるで、ユーリの存在を妬んでいる声色だった。