第1章 前編
ユーリが魔法学校に入学して一年が経った。
この一年間はほぼ座学で、魔法基礎学を学んでいた。
そして入った当初から、ユーリが天竜人でないと分かると、嫌がらせを受けるようになった。
天竜人じゃないと分かったきっかけは、ユーリが持つ魔力が著しく低かったからだ。
入ってすぐ行われる身体検査で判明したその事実。
天竜人は元々の遺伝子なのか、持っている魔力の大きさが凄まじかった。
だから、ほぼ魔力が0のユーリの存在は余計に目立った。
落ちこぼれと罵声を浴びせられ、嫌がらせを受ける毎日。
それでもユーリは負けずに頑張り続けていた。
母の思いを、こんな人たちの言葉や行動で台無しにしたくはなかった。
魔力が低いと言う現実は、流石に少し落ちこんだが、それでもユーリは諦めずにここまで来た。
基礎学の1年間が終れば魔法を使える杖が渡される。
それさえあれば、きっと落ちこぼれのユーリでも魔法が使える。
そう期待を胸にして、彼女は杖が選定される儀式の間に向かった。
そこには既に多くの天竜人が待機していた。
ユーリが部屋に入ると、その存在をまったく気にしない者、嘲笑う者と反応は様々だった。
ユーリはため息を吐くと、壁側に行き自分の順番が来るのを静かに待っていた。