第2章 中編
因みにローが刀に戻らなかったのは、魔物が頻繁に現れるせいもあるが、ユーリの為でもあった。
城を出てすぐローは一度刀に戻った。
すると、王女の怒りの矛先がユーリへと向かったのだ。
てっきり一緒に移動すると思っていた王女。
恐らくユーリが刀に戻したと思ったのだろう。
そして嫌味等言われるのを、適当に流しながらユーリが対応していると、突然ローが現れたのだ。
それに驚いたユーリと喜んでいる王女。
ローはユーリへ一瞬視線を送ると、そのままスタスタと歩き始めて行った。
それを追いかける王女。
ユーリはローからの視線の意味が分からず、首を傾げたが、時間もないので慌てて2人の後を追った。
ローは馴れ馴れし触れてくる王女に眉を潜めながら、礼拝堂へ向かっていた。
彼女から聞かされるどうでもいい話を聞き流しながし、ろくに返事もしてないのに、王女の喋りは止まらなかった。
ローはそっとため息を吐くと、背後にいるであろうユーリのことを考えた。
城を出ようとしていた時に責められていたユーリ。
あの時、ユーリはローが人嫌いなので刀に戻ったと一言も弁解しなかった。
ただ、曖昧に笑って礼拝堂へ急ぎましょうと笑うユーリ。
恐らくユーリなりにローへ気遣ったのだろう。
そんなユーリの姿を刀の中から見ていたローは、仕方なく表に出てきたのだ。
ローのせいにすればいいのに、彼女は自分が勝手に刀に戻したことにしていた。
ローはユーリのそんな行動が理解できなかったが、それで表に出てきた自分自身も、理解できなかった。
(…おれは何してるんだ)
今まで契約者に気遣ったことなど一度もなかった。
だけど、どうもユーリに対してはそれが出来なくなりつつある。
ローはそっとため息を吐いた。