第2章 中編
「実は私、あなたの肖像画を見た時からずっとファンだったんです」
目の前に立つローをうっとりとした表情で見つめている王女。
ローの姿と英雄たちの姿は、ずっと歴史として残っている。
ユーリもローと出会う前、一度だけその絵を見たことがあったが、確かに誰もが頷くイケメンだった。
まさか自分がそのイケメンと関わる日が来るとは夢にも思わなかったが。
王女の手前、膝を付けと家臣たちが口を開くのを王女は手で制すると、自ら玉座から立ち上がりローへ近づいた。
「数百年に1度しか現れない中、この出会えた運命。今日はもう遅い、礼拝堂は明日行くことにして、今夜は泊っていってはいかがですか?」
ローの頬へ手を伸ばし艶のある声でそう提案する王女。
暗に夜のお誘いを感じさせるその言葉に、少し動揺する家臣たち。
ローは眉間に刻まれていたシワを更に深くした。
「…悪いが時間がねぇ。今日はこのまま行かせてもらう」
ローは王女の手を振り払うまではしなかったが、身を翻すとユーリの元へ戻っていった。
その言葉に、どこかショックな表情を浮かべた王女。
ユーリはそんな二人をハラハラした様子で見ていた。
正直ユーリには2人のやり取りの意味がよく分からなかったが、ローが余計に不機嫌になったからあまり良くないことなのだろう。
ユーリは隣に立つローへそっと視線を送った。
「…そうですか。ならば、私も一緒に礼拝堂へ行きます」
どうか、あなたの雄姿を近くで見させてください。
そして、てっきり諦めたのかと思っていたが、王女はまだ食い下がってきた。
その言葉に再び慌て始める家臣達。
礼拝堂は国が管理しているとはいえ、巨大な魔物が潜んでいるという。
そんな危険な場所に王女を行かせるなど、絶対あってはならないだろう。
だが王女は引く気配がない。
ローはそんな王女の言葉に眉をひそめたが、好きにしろと言った。
まだ一ヶ所目の礼拝堂なのに、このグダクダ感。
正直これ以上、時間を無駄にしたくなかった。