第1章 前編
「そうだな、そろそろおまえを連れてある場所へ向かおうとしていた」
ロー曰く、ユーリにも仕事があるらしい。
魔力のないポンコツだったので、その言葉を嬉しそうに聞くユーリ。
ふと、なぜだろうか。
ローの表情が一瞬曇ったように感じた。
「…お前が卒業する頃に魔物が目覚める。それまでに4つの礼拝堂へ向かう」
今まで学生が契約主だったことがなかったローは、礼拝堂へ向かうタイミングを迷っていた。
だが、以前ユーリからなぜ魔法学校へ通ってるのか話を聞いてしまったので、なんとなく学校を辞めさせるのは気が引けた。
だが、そうはいっても時間は限られている。
4つの礼拝堂はそれなりに離れた場所にあるので、学校と話をつけ、魔物退治ついでに寄らせて貰うことにした。
何時の間にか話を付けていてくれていたロー。
学校を辞めさせたほうが自由に動けるのに、彼はそうしなかった。
その事実が、ユーリは申し訳なく思いつつも嬉しかった。
「礼拝堂で私は一体何をすればいいの?」
「…取り合えず適当に何か祈ってみろ。それでいい」
「え?そんな適当でいいの?」
ローの回答に苦笑するユーリ。
するとローが突然ユーリの首裏の魔法陣へと触れた。
「お前からは見えねぇかもしれないが、この魔方陣には4つの円が刻まれている。そこに色を宿らせるだけだ」
ローから触れられて少しビクッとしたユーリだが、どうやら本当に適当に礼拝堂で祈るフリでもすれば色が宿るらしい。
因みに礼拝堂で祭られている神は火・風・水・土とのこと。
なるほど、それに合った色が宿るのか。
ローの話を興味深そうに聞いているユーリ。
ローはユーリの首から手を離すと、今後の話をした。
そして来週、まずは学校から一番近くにある火の神の礼拝堂へ向かうことになったのだ。