第1章 前編
ローが人だった時に好きだった食べ物が分かると、ユーリは早速次の休みの日に一緒にご飯を食べに出掛けることにした。
好きな食べ物がおにぎりと焼き魚と言う、一般的なものとは想像していなかったが。
ユーリは個室のある定食屋を見つけると、刀を持ちそこへ向かった。
一応二人とも既に有名人である。
ユーリはともかくローはあまり人との接触を好まないので移動中は姿をあまり見せない。
そして定食屋に到着し個室へ案内されると、刀から出てきたロー。
2人は適当に好みの物を注文した。
定員が2人を見て少し驚いていたが、特に何も言ってこなかったので助かった。
「…美味しいですか?」
運ばれてきた焼き魚定食を黙々と食べているロー。
何も言葉を発しないから、やっぱり味は感じないのかと不安になったユーリはそう尋ねた。
「……あぁ。久しぶりに魔力以外で旨いと感じた」
ローの言葉に嬉しそうに笑ったユーリ。
霊なのでその辺はどうなのか分からなかったが、彼が少しでも今を楽しんでくれるならそれだけで良かった。
追加で何か頼んでいるローに合わせてユーリもデザートを適当に頼んだ。
「そういえば、闇の魔物はどこにいるんですか?」
2人で適当に会話しながらご飯を食べていると、ふと疑問に思ったことを聞いた。
ローが目覚めたのは闇の魔物を倒すためだ。
だが彼と出会って数ヶ月、そんな魔物の目撃情報はまだなかった。
「…まだ目覚めてねぇ。だいたいおれが目覚めて1年後くらいに現れる」
なるほど、どうやらローは闇の魔物が目覚めたら分かるらしい。
「私は何かすることあるんですか?」
ローに選ばれた英雄達がどのように過ごし、どうやって魔物を倒したのか。
それに関する書類は、何故かほとんど残っていなかった。
それが意味するのは何なのか。
それとも誰も記録しなかったのか。
もしくは誰かが意図的に情報を消したのか。
ユーリは不思議に思いながらローの返事を待った。