第1章 前編
定食屋の帰り道、再び刀の中に戻ったローを連れて、ユーリは図書館へ向かった。
そして人が少ないことを確認するとローに呼びかける。
ユーリに呼ばれて表に出てきたローは、目の前に広がる広大な図書の数々に少し驚いているようだった。
「今の時間帯はそんなに人がいないと思うので、もし興味があれば暫く好きに過ごして貰って大丈夫ですよ。借りたい本があれば私に言ってください」
ユーリはローが本が好きなのを知っている。
だから魔法学校にある図書室だけじゃなくて、本格的な図書館へ何時か連れて行ってあげたいと思っていたのだ。
「じゃ、私は適当に時間潰しているので。何かあれば呼んでくださいね」
そう言って離れていったユーリ。
その姿を複雑そうな表情で見ていたローだが、こんな機会はあまりないだろうから、ユーリの言葉に甘えることにした。
(…今回は、随分と変わった契約主と出会ったな)
ローは興味のある本を見つけると幾つか手に取って、閲覧室で読んでいた。
時々、ふと何かを考え込んでいるようだったが、彼は本を読むのに没頭しているようだった。
そして数時間後。
ユーリに借りたい本を幾つか伝え、二人は図書館を後にした。
結構な時間が経っていたのでユーリは一体何をしていたのかと思えば、机に伏せて眠っている姿を発見した。
本にあまり興味のないユーリは、それでもローの気が済むまで待ってくれていた。
その事実にローは複雑な表情をする。
ユーリの言葉が、ローへの態度が、ここ最近彼を悩ませていた。
ローをここまで困惑させた契約主は今までいなかった。
ただ淡々と礼拝堂を回らせて、魔物を倒す。
契約主が女性だった時は色々鬱陶しいこともあったが、ローの心はどこまでも冷たく、冷淡だった。
それがどうだ。
ユーリと過ごして早半年。
ユーリの扱いに戸惑いを感じ始めているロー。
魔法学校への移動中、ローは再び刀の中に戻ると、そっとため息を吐いたのだった。