第1章 前編
「意味はないかもしれないけど……食べれるなら、一緒にご飯食べようよ。それで美味しいと感じれる何かがあるなら、その方がいいんじゃないかな?」
ユーリの言葉に怪訝な表情をするロー。
彼女が何をしたいのか分からなかった。
もしかしてユーリは、ローを同じ人として扱おうしてるのだろうか?
「好みとかあったら教えてね。後、本も言ってくれれば色々用意するから」
ローの隣に座りニコニコしながら提案をするユーリ。
ローは少しだけ目を見張った。
今までローに対してこのような言葉を言った人物はいない。
恐らく、杖に宿っている霊達も言われたことがないだろう。
ーーー友達はどうでしょうか?
難しい表情でローが考え込んでいると、ふと以前に言われた言葉を思い出した。
「お前は、まさかおれを人として扱おうとしてるのか?」
最初は冗談だと思っていたが、彼女の言動を見ると本気で言ってるようだった。
「言ったじゃないですか。私たちはお友達ですねって。せっかく刀から出てこれるようになったんだから、楽しいこと、やりたいこと、沢山しましょうよ」
闇の魔物が現れるまで、ローは刀の中で眠り続けているとユーリは聞いた。
それが何百年という単位であろうとも。
ローからすれば、眠っているのでそこまで長い時間を感じないが、ユーリは少しだけ思うことがあったようだ。
ローは魔物退治をしてくれる道具ではない。
闇の魔物を倒したら、彼は再び長い眠りについてしまう。
だからせめて、今できることをたくさんして欲しかったのだ。
「…変わった奴だな、お前は」
ローは本を閉じると、ユーリへと視線を向けた。
ユーリから向けられる、真っすぐで純粋な視線。
ローはユーリの先ほどの言葉を、特に気にした様子はなかった。
寧ろ悪い気はしなかった。
だから、人だった時に好きだった食べ物を教えてくれたロー。
そんなローの言葉に、ユーリは嬉しそうに笑った。