第1章 前編
魔力の補給のやり方が分かって以降、以前と変わらず二人は依頼を受けては魔物退治へ向かっていた。
しかし魔物退治と言っても座学がある時もあり、そのときはユーリは魔法学校に滞在する。
座学を受けている間は、杖に宿っている霊も一緒に傍で待機していたり、杖の中で眠っていたりと結構自由にやっているようだった。
そしてローもユーリが引きこもってばかりいないでと言う言葉を少し気にしたのか、ユーリが座学を受けている時、珍しく刀から外に出てきて、離れた所からユーリの様子を見ていた。
一瞬驚いたユーリだが、この前言った言葉を覚えていてくれたようで、嬉しく思っていた。
見た感じは子供の授業参観を見に来た親みたいな雰囲気だが、それでも彼が積極的に出てきてくれたのは嬉しかった。
だがそれも、休み時間になってすぐ女子生徒達に囲まれてしまい、鬱陶しく思ったのか刀に戻ってしまったロー。
そして生徒から睨まれるユーリ。
そんなやり取りを数回繰り返していくうちに、再びローは刀から出てこなくなってしまった。
「ローは食欲とかないの?」
刀から出てこなくなったといっても、ユーリの私室に戻るとローは表に出てきてくれる。
これは中々大きな進歩と言っていいだろう。
相変わらず彼が何を考えてるか分からないが、ユーリはローの好きにさせていた。
そして昔から好きだったのかは分からないが、最近はまってる本があるようで、ソファーに座って本を読んでることが多かった。
「おれは人じゃないんだからあるわけねぇだろ。あったとしても、魔力が欲しいという欲求だけだ」
「……確かにそれもそうか。でも食べようと思えば食べれたりする?」
私室の中で過ごす二人の時間が増えたおかげか、ここ最近会話が増えつつあった。
ユーリはローとコミュニケーションを取りたいと思っていたので、彼が嫌がらない程度に色々質問をしていた。
「食べれることは食べれるが、それをすることに何の意味がある?」
ローは本から視線を逸らさずにユーリへの質問に答える。
少し素っ気ない気もするが、これも最初に比べればだいぶマシになったほうだ。