第1章 前編
ユーリから麻痺を使わずに血を飲んでくれと頼まれて、ローは一瞬眉を顰めたが、すぐにその首筋に噛みついてやった。
「いった!!ちょ、まじで痛いんだけど!」
そしてすぐに聞こえてきたユーリの悲鳴。
ローはだから言っただろと言いたげに、ユーリの首筋から顔を上げて視線を送った。
まさか麻痺を使わないとここまで痛いとは。
噛まれた痛みもあったが、その後の生気を吸い取られるような感覚がまじで痛かった。
あれは表現できるものではない。
とにかく全身が痛かったのだ。
「……すいません、キスでお願いします」
ユーリはこの痛みは流石に無理だと判断し、泣く泣く別の選択肢を選ぶことにした。
そしたらまた気のせいだろうか、舌打ちが聞こえた気がしたんだが。
まさか最後の選択肢が良かったのか?というか試してみたいのか?
マジで勘弁してくれよと、ユーリは肩を落とした。
「因みに頻度はどれくらいなんですか?」
ユーリはローの何か言いたげな視線を完全にスルーすると、今後のことについて話すことにした。
流石に3か月に1回はないだろう。
「…それはその時々で違う。取り合えずおれが魔力が必要になったときだ」
「じゃぁローから指示してくれるんですね」
何とも曖昧な回答だったが、実際にはそうなのだろう。
彼が1日に使う魔力は、戦う魔物の数で変わるのだから。
ユーリは次は一体何時言われるんだろうと、何処か遠い目をしながら考え込んでいた。
早く慣れるべきなのだろうが、たぶんすぐには無理だろう。
因みに彼が鞘からあまり出てこなかったのは、魔力を温存するためだったらしい。
といっても元々、あまり外に出るのは好きじゃないらしいが。
なるほど、これが引きこもりか。
ユーリは少し苦笑した。
それを見て睨んでくるロー。
取り合えず今後の方向性はだいたい決まってきたので、今日はもう休むことにした。
ローが鞘に戻ったのを確認すると、彼女もまたベットに横になった。
2人の関係は、まだ始まったばかりだ。
これからきっと、色々なことが待っているのだろう。
ユーリはぼんやりと今後のことを考え込んでいたが、すぐに眠りに入っていったのだった。