第1章 前編
お互いの舌が絡み合う水音が、辺りに響き渡る。
ローはじっとユーリを見つめていた。
ユーリは瞳を閉じて身体を震わせて、耐えているようだった。
そしてどれくらい経っただろうか、ローはユーリを口づけから解放すると、少しだけ上着を寛げ、その首筋を露わにした。
そして唇を近づけ、少し強い力で首元に噛みついた。
ユーリは快楽と熱にまだ浮かされているので、痛がる様子はない。
ローは僅かな血と生気をそこから吸い上げた。
そして唇を離し、血を拭う。
その仕草に感じた色気に、ユーリはぼんやりと彼を見ていた。
「…たったこれだけで、この魔力。…ありえねぇ」
そしてローは何かを呟き、考え込んでいるようだった。
生気を貰う方法は口づけもあるが、先ほどのように血を貰いその場所から吸い取る方法もある。
今回は両方やってみたのだが、たった数秒のやり取りでローの魔力は全て回復していた。
しかも、過去今まで貰ってきた魔力よりも遥かに美味いというか、相性が良い。
刀が彼女を選べと言ったのは、この為か?
ローは思わず刀へと視線を送った。
「…あ、あの…魔力は回復しましたか?」
ユーリは漸く意識が鮮明になってくると、色々突っ込みたかったが取り合えず一番心配していたことを聞いた。
確かに何をされてもいいかと最初に聞かれて了承したが、まさかキスをされるとは思わなかった。
心の準備も何もできずに、もうすでに終わった後なので今更突っ込んでもどうしようもないのだが。
「…あぁ、完全に回復した」
寧ろ、元々持っていた魔力より少しだけ威力が上がってる気がする。
ローの言葉に安心した表情をした彼女。
キスをされたことには文句は言わないのか。
思わずローはそう思った。
事前に言うと抵抗されても困るので、いきなりしてしまったのだが。
まぁ彼女から文句の言葉が出てこないなら、これ以上そのことについて聞くつもりはなかった。