第1章 前編
「私は、あなたと対等な立場になりたいんです」
ユーリは真っすぐとローへ視線を向けた。
例え落ちこぼれでも、努力はいくらでもする。
彼と一緒に戦えるよう、何だってするつもりだ。
「このおれと対等な立場だと?ふざけてんのか?」
だが、ユーリの提案はお気に召さなかったらしい。
確かにそれもそうか。
あの伝説の英霊と呼ばれている人物と、対等な立場など恐れ多くて口が滑ってでも誰も言わないだろう。
ユーリは自分で言ってしまった言葉に、思わず苦笑してしまった。
それなら契約者を変えて、少しでも彼と同等の人物を選べばいいものを。
以前それを聞いた時は、まだ様子を見るとしか答えは返ってこなかったが。
「確かに対等な立場は恐れ多いですね。それなら友達はどうでしょうか?」
「…は?」
ユーリの更なる言葉に怪訝な表情をするロー。
実はユーリはこの3か月間、どうやって彼と仲良くなればいいのかずっと考えていた。
契約者を変える気が今のところないなら、何とかして信頼関係だけでも築ければと思っていたのだ。
ユーリはローの右手を掴むと、握手をした。
「はい、これで私たちはお友達ですね。あんまり鞘に引きこもってないで、これからは外で過ごしてみたらどうですか?」
ユーリはローの手を離すと、笑顔でそう言った。
それを見て、ローは軽く目を見張ると、ため息を吐いているようだった。
今まで契約してきた者は全て、守ってもらって当たり前だと思ってる人物がほとんどだった。
だが、ユーリは守ってばかりは嫌だと言った。
無力なのは承知なはずだ。
だけど彼女は、それでもローの力になりたいと。
ローは彼女の言葉に、少し戸惑っている様子だった。
「対等な立場と友達は、何か違いでもあるのか?」
「え?それは、友達は何でも相談できて支え合える関係?対等な立場は………戦友みたいなもの?」
自分で話しててよく分からなくなってきたが、取り合えずユーリはローとコミュニケーションが取りたいだけなのだ。
そんな思いを込めて、ユーリはじっとローを見つめていた。