第1章 前編
適当に呼んだ女は、頬を赤らめながら喜んでローの元へとやってきた。
「…右手を出せ。お前の魔力を貰う」
ローの言葉に一瞬呆けた表情をした彼女だが、すぐに喜んでと魔法陣が書かれている右手をローへ差し出した。
ユーリは首裏へ魔法陣が刻まれているが、魔法陣が刻まれる場所は人それぞれだ。
特に法則性はないが、後は宿る魂の趣味だろうか。
ローは女の右手を掴むと、目を閉じて魔力を吸い取った。
その様子を少し離れた場所から見ていたユーリ。
一体彼は何をしているのだろうか。
ユーリがぼんやりと彼らの動向を見ていると、ローが彼女を手を掴んで数秒後、その手を離した。
「もういい、おまえは下がってろ」
ローはそれだけ言うと、刀を取り出し残りの魔物を一瞬で消し去った。
それを唖然とした表情で見ていたユーリ。
ローが力を取り戻したということは、彼女から魔力を貰ったのだろうか。
見た感じ、たった数秒しか接触してなかったがこの威力。
さすが英霊と呼ばれるだけのことはある。
「何ぼーっとしてるんだ」
ユーリが茫然としていると、何時の間にか目の前にローがたっていた。
そして怪我をしているユーリを見てローは眉を顰めると、治癒魔法を使った。
なんと、彼は回復まで出来るのか。
ユーリは驚いた表情で彼を見ていた。
だが、傷は癒えても使い果たした魔力は簡単には元に戻らない。
少しふらついているユーリにローは舌打ちをすると、ユーリを抱えてその場から消えた。
一応、同行して来た者達には先に帰るように伝えておいた。