第1章 前編
ユーリは不機嫌そうに彼女たちを押しのけて、鞘に戻ろうとしているローに気づき、鞘を取り出した。
「…?」
だがその瞬間、僅かな気配と違和感を感じた。
「…っ!?ロー!!」
ユーリは突然ローの背後に飛び出してきた魔物に気づき、ローへ危険を知らせた。
だが、完全に気を抜いていたのか、それとも力が補充できていないのが原因なのか分からないが、彼の反応が僅かに遅れてしまった。
「…っ!!」
ユーリは自分が持っている魔力全てを使い、ローと魔物の間に瞬間移動し、バリヤを張った。
何とか魔物の攻撃はかわせたが、所詮魔力など皆無に近いユーリの力。
バリヤはいとも簡単に壊され、ユーリの身体は魔物の攻撃を受けて吹っ飛ばされた。
「…おい!?」
それを驚いた表情で見ていたロー。
ユーリの身体は地面に打ち付けられると、血が流れてるのが見えた。
そして何時の間にか増え始めてきた、魔物の群れ。
ローは舌打ちをした。
ユーリと契約を結んで3か月。
いい加減、彼も限界が来ていたのだ。
そのことについて、そろそろ話すべきかと悩んでいた時に起きた、この非常事態。
目の前には何とか立ち上がり、大丈夫だとローへ視線を送っているユーリ。
ローは残っている魔力を使い魔物の群れを薙ぎ払うが、こういう時ばかり魔物の群れは次々とやってくる。
そしてその魔の手は、離れた位置へ飛ばされたユーリの元へと向かおうとしていた。
(…くそっ、仕方ねぇか)
ローは同行してきた女に、近くに来るよう呼んだ。