第1章 前編
そして更に1か月が経った。
やはりローの調子はあまり良くないようだった。
一緒に同行している彼女達は気づいていないだろうが、ユーリだけは分かっていた。
分かってはいるが、どうすることもできない自分自身が嫌で仕方なかった。
私は何のためにあの学校へ通っていたのだ。
落ちこぼれなのは分かっていたが、完全な役立たずではないか。
ユーリは目の前で戦っているローを見ながら、握りしめていた手に力を込めた。
あの日以降、ユーリへの死の宣告はまだされてない。
そして、魔力の補充の仕方も教えてくれない。
相変わらずまともに会話をしない日々だけが過ぎて行く。
このままで本当に大丈夫なのか?
それはローの心配と、いつ来るか分からない闇の魔物との戦いのことについてだ。
ユーリは正直無力だ。
そして英霊のローを使いこなせるどころか、力すら与えることができない。
私がここにいる意味は一体何なのか。
ユーリは戦いが終わったのか、こちらへ歩いてくるローをぼんやりと見ながら色々考え込んでいた。
何も出来ない自分自身が悔しくて仕方ない。
本当は彼と一緒に戦いたい。
他の生徒達は、杖に宿る魂に完全に戦いを任せている者もいるが、ほとんどの者は一緒に戦っていると聞く。
その方がお互いの信頼関係も築けるし、シンクロ率も上がりやすいらしい。
だがしかし、ユーリはローと信頼関係などまったく築けていない。
彼が何を考えてるかまるで分らないし、ローも私のことなんて何も知らないだろう。
もしかしたら興味なんてないのだろうか。
ユーリは同行してきた女性たちに囲まれているローを見ながら、そっとため息を吐いた。