第1章 前編
「……魔力がないのに、それをおれに聞く意味はあるのか?」
そして帰ってきて答えはそれだった。
いやまぁ確かにそうなのだが、一応心配して聞いたんだからそんな睨まないでくれよ。
「確かに魔力はないですが、もし必要ならと思いまして。魔力以外にあなたに力を与える方法があれば教えて欲しいです」
ユーリに言葉に、ローは暫く黙り込んでいた。
魔力が必要ですかという問いかけを否定しなかったことは、やはり彼も必要なのだろうか。
ユーリはじっと彼を見つめつつ、再び答えを待っていた。
「……確かに、契約主の魔力がなくても力を補充する方法はある。だが、てめぇが気にする必要はねぇ。おれが元々持っている魔力は高いからな」
ローはため息を吐きながらそれだけ伝えると、話はそれだけかと言って再び鞘の中へと戻っていった。
…ちょっと待て。まだ何も解決してないぞ。
ユーリは刀を見ながら唖然としていた。
彼の言い方では、どうやら魔力は必要で、契約主の魔力がなくてもその補充方法は別にあるようだ。
だが、彼はそれを教えてくれなかった。
別の方法で補充すると、何か都合の悪いことでもあるのだろうか。
……っは!?もしかして私の命とか!?
辿り着いた可能性に、ユーリは軽く青ざめた。
なるほど、魔力のないポンコツはせめて命を差し出して次の契約主へ渡る準備をしろということか。
まだそう決まったわけではないが、ローが何も教えてくれないので、ユーリの思考はどうしても悪い方へ考えてしまう。
ユーリはもう英霊に選ばれてしまった。
せっかく母が命を掛けて助けてくれた命を、捨てることになるだろうか。
だけどもしそうなったら、ユーリが命を捧げないと今度は世界が救えなくなる。
きっと母は悲しむだろうが、仕方ないことなのだろう。
ユーリはグルグルと考え込んでいた。
何度も言うがまだそう決まったわけではないのは分かってる。
だが、何時されるか分からない死の宣告に、ユーリは落ち着かない様子で考えこんでしまっていた。