第3章 後編
「泣いてばっかりだな」
ローはそんなユーリの頭を優しく撫でた。
「…だ゛、だ゛って、嬉しくて」
ユーリはローにしがみつき、本格的に泣き始めた。
暗い施設を彷徨っている時、水槽を泳いでいる時、ローを見つけた時、彼が落ちていった時……私が死を覚悟した時。
だれがこんな展開を予想できたのだろうか。
途切れ途切れに伝えられるユーリからの言葉。
それをローは、静かに聞いていた。
ユーリには感謝してもしきれない思いがあった。
だからこそ、これからのローの人生全てを、彼女に捧げようと決めたのだ。
初めてユーリと再会したあの教室で、彼女の腐敗は綺麗に無くなっていることに、まず安心した。
ローを救うために彼女が傷つくことなど、見たくなかった。
…もし、何かしら後遺症が残っていたら治そうと思っていたが
ローはユーリが次第に人目を気にし始めたので、仕方なく起き上がった。
1000年前の医療の技術が通用するとは思えないが、基礎知識があるだけでだいぶ違うだろう。
ローがあの魔法学校へ来たのは、医学を学ぶためでもあった。
流石は金持ちが集まるエリート学校なだけあって、魔法だけではなく医学の設備もしっかりしていた。
だからローは1年という期間を条件とし、あの学校の教師を務めることにした。
学校側からすれば、あの英雄が教師など願ってもない好条件だ。
だから1年と言わず何年もいて欲しいと言われたが、ユーリが卒業してしまえば、正直あそこにはもう用はなかった。
ローならば、1年あれば十分な医学の知識を身に付けれるだろう。
後は、ユーリと共に過ごしながら、別の場所で医学を学ぶつもりだった。