第3章 後編
「そう言えば、どうして先生になったのですか?」
二人は立ち上がり、服についた砂を軽く払うとユーリからそんな質問をされた。
それに関しての答えは、先ほどの医学の件もあるが、実はもう1つあった。
「おまえが無茶をしないよう見張るには、あの立場がちょうどいいからな」
そう不敵な笑みを浮かべるロー。
ついでに言うならば、余計な輩がユーリにちょっかい出さないよう、牽制するためでもある。
まぁ、彼女に付けられた指輪を見てちょっかいを出してくる命知らずはいないだろう。
当然相手はローだと、すぐ学校中に広まるだろうから。
「み、見張るんですか」
ローの言葉に、軽く顔を引きつらせるユーリ。
仮にも婚約者に、見張るなどと言う表現はどうなんだ。
…いや、彼ならありえるのか。
何やらグルグルと考え込んでいるユーリ。
彼女の涙は、すでに収まっていた。
「…っは、せいぜいおれの機嫌を損なわないよう、気を付けるんだな?」
そんなユーリに対して、更に追い打ちを掛けられるように言われた言葉。
ユーリは一瞬唖然としたが、慌てて首を縦に振った。
「ふ、ふつつか者ですが、よ、よろしくお願いします」
そう言って、おずおずとローの手を握るユーリ。
何とも幼稚な行為だが、それはそれでクルものがあった。
「…っ!?…っふ…」
ローはその手を引き寄せると、身体を屈ませてユーリにキスをした。
最初は軽いものだったが、次第に激しくなる口づけ。
ユーリは息を荒げながらそっと瞳を開けると、彼と視線が交わった。
その瞳は、もう青く光ってはいない。
だけど全身を駆け回る快楽は、昔と変わらないものだ。
それはとても甘く、幸せなものだった。