第1章 前編
生徒が杖に選ばれると、すぐに実践用の訓練が始まった。
生徒同士で行われるその訓練は、実際はそれぞれの杖に宿る魂が戦うのだが、主の魔力と魂とのシンクロ率の影響が大きい。
皆、色々と試行錯誤しながら戦法を学んでいた。
そして訓練はもちろんユーリも参加している。
正直周りの生徒からの冷ややかな視線よりも、刀に宿る魂の方が怖かった。
恐る恐る召喚してみると、不機嫌オーラを隠しもせずに現れて、相手の杖に宿る魂を瞬殺していった。
瞬殺と言っても、所詮杖に宿る魂で実体はないので、暫く眠りに付くだけだが。
魔力が0でシンクロしてる気配もないのに、この力の差。
流石英霊だけと呼ばれるだけある。
因みに私たち生徒は所謂魔法が使えるのだが、私が持っているのは杖ではなく刀だ。
よってよく分からないが、魔術師(物理)という謎のカテゴリーに分類されている。
どちらでも、ローが最強なのには変わりはないのだが。
そしてそれを面白くない生徒が多いのもまた事実で、ユーリの悩みは尽きなかった。
何回か刀が盗まれそうになったが、最初に刀が現れた時と同じように、ユーリ以外には触れることすらできないようだ。
その事実を、どこか他人事のように感じていた。
未だに、ローと一緒に闇の魔物と戦うと言う実感がわかない。
というか私は別にいなくても、ローが勝手に倒してきてくれるのではないのだろうか。
本人にそんなこと怖くて聞けないが、ユーリの疑問は尽きることがなかった。
そしてそんなことを考えていると、ローが強すぎて訓練にならないので、ユーリだけ特別な訓練を与えられることになった。
その内容は、本物の魔物と戦うというもので、つまり実践だ。
まだ何も分かってないのに、この放置されている感。
もともと教師からもよく思われてなかったので仕方ないかもしれないが、ユーリは一体どうしたものかと頭を悩ませていたのだった。