第3章 後編
「…い、いや…その節はその…私も…世界を守りたいと思って」
ローの怒りを前に、視線を彷徨わせて挙動不審になるユーリ。
その様子を見てローはそっとため息を吐いた。
「何のためにおまえを守ったと思ってる。こんな世界どうなってもいいんだよ」
「え、ずっと守って来たのに?」
ローの言葉にユーリは首を傾げる。
だがすぐに、ユーリと世界を天秤にかけるなら、おれはユーリを取ると言われた。
一瞬何を言われたのか理解できなかったが、その意味を理解したユーリは途端に頬を赤くした。
その姿を見て、ローの機嫌は少しよくなったのか、優しく頭を撫でられた。
「まぁ、こうして生きてたんだ。今回は許してやる」
次同じようなことをしたら、死んだ方がましだと思わせることをするがな。
そう口元を吊り上げて笑うローに、ユーリの顔は軽く引きつった。
言われなくてもそうするつもりだが、例えば道路に飛び出した子供を助けようとユーリも飛び出したらアウトなのだろうか。
何処までがセーフで、何処までがアウトなのか分からない。
何やらブツブツと言っているユーリ。
そんなユーリにローは苦笑した。
「取り合えず、お前明日から休みだろ?今からちょっと付き合え」
そう言ってユーリの手を引き、何処かへ連れて行こうとするロー。
ユーリは何処へ行くのか聞いてみるが、行けば分かるとしか答えてくれなかった。
繋がれた手。
その手から伝わる暖かさに、ユーリは漸くローが人に戻れたんだと実感し始めていた。