第3章 後編
「…ローっ!」
ユーリは言われた通り、すぐに指定された場所へと向かった。
慌ただしく開かれた扉。
そこには未だに信じられないが、ローがこちらを見て立っていた。
ユーリは思わずその身体に抱きつく。
そんなユーリを軽く受け止めたローは、泣いている彼女の背中を優しく撫でた。
「も、もう…逢えない…かと」
嗚咽交じりで伝えられた言葉。
それはローも同じことを思っていた。
ローとしても、まさか自分がこうしてこの世界に戻ってこれるとは思っていなかったのだ。
「…麦わら屋に、こっちに来るんじゃねぇって、殴り飛ばされた」
冥界へと落ちたローの精神は深い闇の中を漂っていた。
そこに現れたのは、麦わら帽子を被ったかつての同盟相手。
そして久しぶりの再会を感じる間もなく、先ほどの言葉と共に強烈な一撃をくらった。
その後、目が覚めたら見知らぬ小屋の中にいたのだ。
状況を理解するまで時間がかかり、更には何時の間にか能力が使えなくなっていた世界。
まさかあのローが、ただの森を命懸けで彷徨うことになるとは。
何時までも人のいそうな場所に辿り着かず、危うく餓死しかけた。
空腹という概念を久しぶりに感じたロー。
それはつまり、彼が人に戻った証拠だった。
「…そうえいば、私も…彼の声を聞いたような気がする」
朽ちていく身体に、そっと触れられた手。
今思えば、あれはルフィだったのかもしれない。
「…随分おれと扱いが違うじゃねぇか。…つか…」
ユーリの言葉に不機嫌そうに眉をひそめたローだが、不意に抱きしめられていた手に力を込められた。
「てめぇ、勝手に死のうとしてるんじゃねぇよ」
ユーリの顎に手をかけられ、強制的に合わせられた視線。
ローの瞳には、はっきりと分かる怒りの色を浮かべていた。