第1章 隣の席の狛枝君
「あいつ、絶対倉敷のこと好きなんだよ」
『え?なんで』
「知らないけど、きっとそう!三回連続隣の席なんてありえないし、あいつ自分でツイてるって言ってたじゃん!」
『まぁこの学園じゃ私的なキャラの薄いやつと近くにいた方が楽なのでは』
「その鈍感さでなにキャラが薄いとか言ってんの⁉︎目の前でフラッシュ焚くよ⁉︎」
『瞳孔への直接的暴力」
めんどくさくて振り切ろうとするが、小泉は後を追ってくる。仕方なく一緒に下校する間も、ずっと狛枝がどうとか言って騒がしいことこの上ない。
『みんな狛枝の幸運を信じすぎなのでは?そこまで彼、強運でもないよ。傘忘れるし財布落とすし』
「傘忘れて、結局どうしたのよ?土砂降りの中濡れて帰ったの?」
『いや、ちょうど帰るタイミング被ったから私の傘貸して帰ったよ』
「相合傘したんでしょ⁉︎ほら、やっぱりそうじゃん!」
『…財布は関係なくない?5万近く今月で落としてるんだよ』
「だから最近狛枝にお菓子やらなんやら分け与えてるわけ?それもあいつの思うツボなんだよ」
『えー…みんながカラオケ行こうって日に財布忘れることのどこが思うツボなの?』
「あんたさ、結局誰か一人行けないなら私も行かないって言って狛枝と帰ったよね」
『ちょっと待ちなよ、なんでさっきから私といればラッキーみたいな話になってんの?』
「だーかーら、狛枝が倉敷のこと好きなんだったら、倉敷といれればラッキーでしょ?」
『私は好きな人といれても5万失うのはごめんだね』
そんなの狛枝次第でしょ!と論破してくる小泉と分かれ道で別れたあと、家に帰った。家に帰って、数時間後。明日の授業で必要な道具を買いに行かなくてはいけないのを思い出し、自分に文句を言いながらも着替えて街に出た。