第1章 アネモネの夢00~50
綺麗な顔して言葉が鋭い。そして私の手を強く掴むこの男は、男性の物言いにかなりイラッとしてるらしい、掴む手がほんとに痛い。
「フン、だからどうだって言うんだ?アンタにゃ関係無いだろう?」
「いえ、もしかしたらアナタのソレが原因で私が駆り出される可能性もありますよ」
にっこり、綺麗に微笑む男性は私を見て一度お辞儀をしてから名刺を渡して来た。毛利神楽?毛利って大企業の…あそこですよね。ここの会社よりも大きくて、権力的にもとても大きい
「実家の企業を手伝いながら弁護士をさせて頂いてます。さあ、貴方の行為はセクハラで訴えられてもおかしくないのですよ」
「百合ちゃんから離れてね」
「うおぁ!?」
「市ちゃん!?」
男の背後から市ちゃんが膝カックンを食らわせれば私を掴んでいた手が離れて転がる、瞬時に神楽さんが背に庇ってくれて胸ポケットからハンカチを取り出すと握られてた手に持たせてくれた。香水?凄く良い匂い。生地も柔らかくて肌触りが凄く良いです。
市ちゃんが素早く動いて、膝カックンして転ばせた男に誰がやったのか気付かれて無いけど周囲は凄い見てたよ?この空気で男に味方する者は居ない感じだし、え、市ちゃん毛利さんのお知り合い?
「暫く気持ち悪いでしょうが、これを握って紛らわせてください」
「あ、りがとうございます」
「百合ちゃん、もう…何で1人で出てきちゃったの?」
連れが居るからLINEでこれから上がるって送ったのにと言われて、急いで見たら未読だったごめーん、
毛利さんはキッと、美人な顔で男を睨み見下ろしていて私に近付く隙を見せない。いやあ、何と言うか、綺麗な顔で睨むのも迫力があるなあ。
「毛利殿、市姫、大変待たせて済まない。藍羽君も丁度良いところに。彼等を案内してくれるか?」
「松本社長」
「…君はそこで座り込んでどうしたんだ?」
「…いえ、すみません。滑ってしまいまして」