第1章 アネモネの夢00~50
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翌日、雹牙の送迎で会社に到着した百合は注目されながらも秘書課まで雹牙に送って貰い、昼にまた来ると言って分かれてから、なるだけ1人で秘書課から出ない様に仕事をこなしていた。
ふとLINEにメッセージが来ていて、誰だろうと開いてれば市ちゃんから。え、お昼一緒に食べよう?こっちに来てるのかな?
「藍羽?どうしたの?」
「市ちゃんがお昼一緒に取りにくるそうです」
「あら、でもアイツが居るから織田さんのお兄さん来るの待つ?」
「んー、雹牙さん来るまで待たせちゃうのも何だし…」
まさかお昼のこの短時間に見張ってるほどアイツは暇じゃないよね、市ちゃん迎えに行って戻って来る5分で張ってたら重症だと思うし。ハッ、もしもロビーに居る間に市ちゃんが目を付けられたらどうしよう!
いてもたっても居られず、同寮に市ちゃんを迎えに行ってくると言って、財布を持って早歩きで秘書課を出る、キョロキョロと周囲を見渡せば運良くアイツが居なくて安堵の息を吐く。
うん、まさかお昼食べないで私を付けてたらほんとストーカーだよね。安心しきってロビーに出れば、背後からスルリと手を掴まれて鳥肌がぶわっと立った。何で、まさか後ろに居たの?
「藍羽さん奇遇だね、もしかして俺を待っててくれたの?」
「いいえ、待ってません。急に手を握らないで下さい!」
「何で?慣れてって言ったよね」
「私は知りませんそんなこと!!」
しまった。まさか下に降りるタイミングを見計らってたなんて。掴まれた手から物凄く鳥肌が立って気持ち悪い。離してと言っても聞き入れて貰えずぐいぐいと男性の力で外に引っ張られて半分泣きそうになった所で、綺麗な男性の声が聞こえて立ち止まった
「失礼、ミスター?」
綺麗な、女の人の様な男性だと思った。赤く少し長いおかっぱのような髪に綺麗な肌、女顔負けだなと一瞬見入ってしまったくらい。
「何でしょう?」
「先程から受付で見てましたがどう見てもそちらのミスが嫌がってますよ。自覚無いくらい自分の事しか考えておられないのですか?」