第1章 アネモネの夢00~50
「……サスペンスだって聞いたのに」
「サスペンスで間違いはないが」
「これはホラーの分類にしてもおかしくないですぅー!」
見始めた最初の方は確かにサスペンス、推理もの特有の始まり方だった。
友達にもサスペンスで謎解きが凄い見応えがあるから! と勧められたはずなのに……なんでホラーっぽいの?!
ホラーはダメなの、和製ホラーは特にダメなの!
でも、推理ものは見始めたら最後まで見ないと気になって仕方がないし……。
「見るのやめるか?」
「い、いやです! 推理系は最後まで見ないといろんな謎が残るんですぅー!」
「半泣きの癖に何言ってる」
「だってぇ……」
「あー……ほら、こっちこい」
怖いけど、見たい、けど怖いと葛藤して雹牙さんの腕にしがみついて見ていたら、腕を外されて慌てたところで身体が持ち上がって雹牙さんの足の間に降ろされた。
何事かと思ってる間に後ろから腕が回ってきて引き寄せられた。
背中が暖かく、抱き込まれたんだと理解するまで数瞬かかった。
「ひょ、雹牙さん?!」
「なんだ?」
「いや、ぇ、えぇ?!」
「うるさい。見たいなら大人しく見ろ」
「あぅ……」
理解した途端に反射で暴れたけど、私を抱き込んだ腕がしっかり抑え込む。
ぐいっと頭も抑えられてテレビの方を向かされると、ポンポンと頭を撫でられた。
しばらくジダバタしてたけど、だんだんと慣れて落ち着いちゃったら居心地が良くなって、結局観終わるまでそのまま居座ってしまった。
その後は私が慌てて飛び出したこと以外は昨日と変わらずで、のんびりと時間が過ぎた。