第1章 アネモネの夢00~50
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「ほんとに来た……」
「行くと言っただろうが」
「そうなんですけ、どぉっ?! 痛い、痛い、痛い、ギブッ! ギブですッ!!」
半信半疑だったけど、正気を取り戻してから必死に部屋を片付けて布団を用意してってしてたらピンポーンとインターホンがなった。
ちなみに、オートロックは解除番号を教え済みです。前の時にね。だから鳴ったのは玄関前のインターホン。
モニターも確認せず開けて、思わず呆然と呟いちゃったもんだからアイアンクロー頂きました、痛い……。
「邪魔をする」
「あ、はい! でも、その……寝れる場所が私の寝室の床しかなくて。布団はあるんですけど」
大丈夫? と上目遣いに伺えば、一瞬目を瞬かせた雹牙さんは苦笑しながらぽんぽんと頭を撫でてくれた。
私が気にしなかったら大丈夫なのかな? 市ちゃん大好きなお兄ちゃんだから、私範疇外? そんなことを考えてチクリと胸が痛んだけど、直ぐに分からなくなったからきっと気のせい……だよね?
それはさておき、とりあえず今夜のご飯の材料は不足分を買ってきてくれたらしいです、スーパーの袋も持ってた。
ガサガサ音を立てながら雹牙さんが勝手知ったるでキッチンに入っていくので、私も慌てて追いかける。着替えとか入ってる鞄はとりあえずリビングに置くらしいです。
「キッチン借りていいのか?」
「大丈夫です」
コクコクと頷けば、ぽんっと頭にまた手が乗った。なんだろう、これ癖? 癖なの?? 私もだけど撫でられるのデフォルトになりつつあるよね。
他の人にされるのと違って鳥肌立ったりとかしないし、安心できて気持ちいいから良いんだけどさ。
首を傾げつつ大人しくキッチンを明け渡した私はお風呂場の掃除とお湯張りをしてリビングに戻る。あーら不思議、ダイニングのテーブルには美味しそうな料理が沢山!