第1章 アネモネの夢00~50
いや、暗に恋人作れと言うお市様の言葉に頭を抱えれば、急がなくていいんだよと笑って。
「まず近しい大切な人を護ってみるの」
「大切な…人?」
俺に、忍の俺にそんな者が出来るのだろうか?ぎゅうっと、お市様に抱き締められ。大丈夫とあやされている姿は幼子の様で情けない。
深く考えるものじゃないと笑われたが。暫くは周囲の忍に任せて下さいと黒羽に会社を追い出された。
あいつ、家に帰ったら覚えていろよ。
「くくくくっ、馬鹿だな、俺も」
お市様の言葉はまだ全て理解できるものじゃない、だけど、今世で護る物が増えただけだと自分に言い聞かせ。駐車場に停めてあったレクサスに乗り込んだ。
LINEで百合に連絡をすれば今は自宅に居るらしい、今行くと返事してから自宅に荷物を取りに行くため車を走らせた。
『百合、夕食は済ませたか?』
『まだです、どうしましたか?』
『暫くそっちに厄介になる、部屋掃除しとけ、夕食も俺が作る』
「ええええええええ!?」
百合は先程の男の恐怖も吹っ飛び、驚きの悲鳴を上げたと言う。
「雹牙さん泊まるって、えええええ!?」
『荷物軽く家に取りにいくから少し時間掛かる』
「本気なんだ!?」
LINEで少し問答があったけど、雹牙に論破され。顔を真っ赤にした百合は現実かと自分の頬を抓った、痛い。