第1章 アネモネの夢00~50
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百合からLINEで助けてとメッセージが入ってたのに気付いて、思わず顔を顰める。あの男が何かやったんだな?
久しぶりに本社に居る状態でスマホを見ていたからか、何があったのかと黒羽やお市様に覗き込まれて、また同様に眉間に皺を寄せた。
「黒羽、頼めるか?」
「彼女が助けを呼んだのは貴方ですよ?雹牙」
「だが、俺は…」
「市の忍だから?」
「…」
言葉が出なくなった。全て見透かしたうえでお市様は俺の頬に両手を添えて微笑む。俺は昔から貴女の忍で居た筈なのに。
「…最近、」
「うん」
「藍羽と居ると、素直に感情が出て来る気がするんです」
「うん」
「だが…俺はお市様の忍なのに」
「市は、お兄さんにも幸せになって欲しいよ?」
「雹牙、今世は昔と違い平均的に平和ですよ?」
「それに雹牙、市と一緒に居る時もだけど、百合ちゃんと一緒に居る時も、大切そうに相手を見てるよ?」
はっと、お市様の言葉に顔を上げれば、雹牙は矛盾を抱えてるの自覚してる?と苦笑いを零す。
姫様には晴久が居るんですから、と笑う黒羽に目を見開いて。そうか、でも、俺達の警護は必要なのではないか?
「何か遭った時に来てくれるだけで十分、今では昔の忍頭の皆にも気を使ってもらってるし、それにね」
市が今幸せだから、雹牙にも、勿論黒羽にも。"兄さん"には良い人見つけて幸せになって欲しい。
「黒羽や雹牙に子供とか出来たら市も面倒みたいし」
「姫様、それは話が早すぎますよ」
「んじゃ遠くない未来と言う事で。あとあと、義姉さまが増えると市も幸せですが何か」
「う、努力します」
「黒羽がんば」