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アネモネの夢

第1章 アネモネの夢00~50


雹牙さんなら就業時間内の時は端的に要件だけ告げて、急がない事はラインなりメールなりしてくれるのに……。
疲れたと溜息を吐きながら自分の席に辿り着けば、周囲はニヤニヤとした笑みを浮かべて視てくる。
これも非常に腹が立つものだ。彼がどういう人物か知らないが、本当に迷惑極まりない。

「折角、気分良かったのにな……」

まだデスクに置いていた私用の携帯を手に、ラインを開くと朝一番で届いた雹牙さんからのトークを見る。
今夜、私の上がり時間に合わせて食事に行こうというお誘いだ。
目処がついたら連絡することになっている。朝からこれのおかげで上機嫌で出社したのに、なんだかケチがついた気分だ。
さっきの彼が物凄く悪いわけではない。噂によれば、元カレなんぞより断然上をいく男性らしいとは思う。
しかし、だ。私の性格も何もかもを無視しての行動には、辟易としている。
仲の良い同期は最初良かれと思って食事の件に乗ったようだが、私の態度を見ても自分に都合の良い解釈しかしていないことに気付いたんだろう。
後で申し訳なかったと謝罪された。
そこからは同期も彼の誘いにはノーを貫き、私を誘き出す餌にならぬよう気を付けてくれている。

「早く雹牙さんに会いたいな」

ほぼ無意識に零れ落ちたソレは、誰にも届かなかったが私の中で何故か強く波紋を作っていった。
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