第1章 アネモネの夢00~50
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市を救出したのを見守った昴は、一先ず百合を織田家に呼んで市の帰りを待つ。織田には信長公や帰蝶が帰宅していて、百合を歓迎すると同時に協力してくれた事にお礼を述べた。
「百合ちゃんありがとうお市が無事なのは貴女の判断のお陰よ」
「そんな、たまたまGPS機能をつけただけで…私は何も」
「うぬの機転に変わりはない、胸を張れェ」
「は、はい」
がしりと、信長に頭を掴まれたと思ったらわしわしと撫でられて、ニヒルな笑みを浮かべる信長は玄関まで歩いて行った。市を出迎える積りなのだろう。
ガラリと玄関の戸が開いたと同時に聞こえた市の声に百合も玄関に出ると、市は信長に抱き締められて涙を浮かべていた
「市ちゃん」
「百合ちゃん?ごめんね、市」
「…一緒にお風呂にはいろっか」
市の手は気持ち悪そうに首元や長い髪を引っかいていて、何をされていたのか察した百合は帰蝶に用意してもらったバスタオルを受け取り市の手を引いて浴室に向かった。
「何をされたの?」とは聞かない、市が肌を引っかいてる時点で男の手か口がそこに触れていたのだろうと無言でシャワーをかけて背中を洗ってあげる
首筋に紅いものが見えて百合は眉間に皺を寄せながら丁寧に市の身体を洗ってくれた。
「市ちゃん」
「うん?」
「今日泊まってもいい?」
「うん、百合ちゃんの部屋、そのままにしてるから」
「分かった」
晴久も泊まると聞いていたのできっと市と寝るのかなと、そう思いながら可愛い妹分を綺麗にしてあげてぎゅうっと抱き締めた。