第1章 アネモネの夢00~50
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昨日、市ちゃんのデートは上手くいった様で晴久君に連れられてお土産を渡しに来てくれました。
恥ずかしそうにしながらもどっか嬉しそうな市ちゃんはめっちゃ可愛かった!!
それはさておき、その夜に雹牙さんから珍しくラインが飛んできた。なんぞ緊急事態かと思ったら、市ちゃんの事だった。
『黒羽が市の恋人は晴久だと言うんだが……』
『まぁ、秒読みみたいですし、ほぼ確定では?』
『まだきちんと告白もしてないんだぞ?』
『告白って区切りを必要な人とそうじゃない人が居ますよー。市ちゃんと晴久君、幼馴染なんですよね?』
『……』
『パパ、子離れ大事』
なんか娘を取られた父親みたいなこと言ってるから、思わず突っ込んだら既読スルーされてそのままお返事が来なくなりました。
やらかしたかなぁ……忘れるまで会いたくないけど物的証拠残ってるから無理だよねー。アイアンクロー覚悟しなきゃ。
ちょっと雹牙さんの無言に遠い目をしながら次の日はゆったり過ごして週明け、市ちゃんから昼休みにラインが入った。
『百合ちゃん、今日お仕事終わったら空いてる?』
『空いてるよ。今日は定時上がり予定!』
『市、そっち行っても良い?』
『良いよ。うちでご飯食べよ。私作るから』
『うん!』
市ちゃんが来る時間を決めて、今日は一人で来ないようにねと一言添えて私は午後の仕事に励んだ。
予定通りの時間に終わって少し材料を買い足して、家で料理を作って待ってたけど市ちゃんが来ない。
可笑しいなと首を傾げて時計を見ると、約束の時間から既に十分は経っている。市ちゃんは私の家に単身で乗り込んできたこともあるから、場所が判らなくて迷子ということもないしもし迷子なら連絡があるはず。
そう思ってふと、自分に送られて来ていた写真について思い出した。評判が最悪の探偵社の従業員が撮った写真で、スイパラに行って以降は市ちゃんにも時折届いてたと聞いた。
「もしかして……」
ヒヤリと背筋に冷たい汗が伝い落ちた気がして、フルリと身体を震わせると慌てて晴久君と雹牙さんを同じグループに引っ張り込んでラインを投下する。
『市ちゃん、そっちに居ますか?』
『ん? 今日は藍羽さんとこに行くって聞いたぞ?』
『市は大分前に家を出ているが?』
『一人ですか?』
『いや……』