第1章 アネモネの夢00~50
なんだか不思議な気分で軽いノリで言えばクスクスと笑った市ちゃんが、大きく笑って声を返してくれた。
少しだけ音声より映像が遅いのは通信の容量が大きいせいだろう。とりあえず、忘れないうちに用件だけ先に聞こうかなと切り出せば、途端に画面の向こうの市ちゃんがモジモジとして黙り込んでしまった。
どうした、何があった、照れるようなことってことは彼氏か!? 思わずどこぞのレポーターの様な事を思ってしまったが、そこはぐっとこらえて待つと俯きながらもぼそぼそと返事が返ってきた。
結構小さい声だけど拾っているってことは、かなり好感度なマイク設置してるんだねぇ……。なんて思わず逃避しかけたのはご愛嬌である。
市ちゃんにも春がやって来たかぁ……なんて感慨深い気分になってしまった。
「晴久君とのデートで、どんなの着るか迷ってるの?」
『うん。二人で、その、デートって初めてで……。なんか、お友達と遊びに行くのとも、ちょっと違う気がして』
「可愛いなぁ……。市ちゃんは、どんな風にしたいの?」
『ちょっとだけ、驚かせたい、デス』
「ふむ。つまり、普段市ちゃんがしない格好をしてみたいと」
なるほど、と頷き市ちゃんにクローゼットの中身を聞いて私がチョイスしたのは、デニム生地のロングスカートに濃い色のキャミソールとキャミソールがチラ見えするシースルーの七分だけのチュニック。
寒いといけないからストール持ってってねと言えばこっくり頷いた市ちゃんは照れてるのか恥ずかしいのか頬を染めて可愛らしく俯いている。
初々しい! 可愛い! 居候してた時なら間違いなく飛び付く! ともだもだしながらその後少し雑談して通話を切った。
明日デートなんだって、羨ましい!