第1章 アネモネの夢00~50
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『百合ちゃん、ビデオ通話って出来る?』
市ちゃんから、そんなラインが届いたのは今日のお昼休みの事だった。
単身で私の所に遊びに来てくれた日、ちょっと怖すぎて雹牙さんには連絡出来なかったので晴久君にラインしたらお迎えに来てくれた。
この間のスイパラではぐれた時の為にと交換してたのはラッキーだったね!
あの日は新しいスイーツショップでお茶をするには混みすぎてたから、ケーキを買って私の家でおしゃべりしていたのだ。
適当な時間に来てほしいと家の住所と一緒にラインをしておいたら、市ちゃんがそろそろ帰ろうかなと思う頃を見計らったようにお迎えに来てくれたので感心してしまった。
それはさておき、あれから数日、今日は週末である。
『出来るよ。最近使ってないけど、カメラ付のノーパソだし』
市ちゃんが遊びに来てくれた日から、少しだけ気分が上を向いたので翌日からちゃんとお弁当と食事は自炊している。
というわけで、自分で作ったお弁当を食べながらラインを返すと直ぐにピコーンとライン着信の音がする。
『今日の夜、通話してくれる?』
『良いよー』
市ちゃんから、上目遣いしている黒猫のスタンプが届いて、思わず市ちゃんの顔を思い出したら可愛くって悶えつつブンブンと首を縦に振っているスタンプを押しながら了解を告げた。
お互いに帰宅したらラインを送るという約束をして、市ちゃんは会議があるらしく離脱していった。
私もお昼ご飯を食べ終わったので食後のコーヒーを飲みつつ自分の席に戻って、少しでも早く帰宅できるようにと少々早いけれど仕事に手を付け始める。
周囲から彼氏とデートかと言われたけど、どちらかというと美人とビデオ通話デートですね、うん。彼氏じゃあない。
からかいを軽く流しながら午後の仕事を終え、家事や風呂等身支度を済ませてから市ちゃんに準備オーケーの連絡を入れると、市ちゃんからビデオ通話の着信が入った。
『百合ちゃーん』
「はいはーい、あなたの百合ちゃんでーす」
『あはは! 百合ちゃんってば』
「いやぁ……何か慣れないと照れくさくって。それで、どうしたの?」
受信すると少しして画面に映像が映り込み、少し前までは気軽にお邪魔していた市ちゃんの部屋と笑顔の市ちゃんが映り込む。