第1章 アネモネの夢00~50
31
「お前なあ、自分もストーカーされてるって自覚持てよ」
市はふと、忘れてたと言えばにこやかな晴久に軽くチョップされた。
何で晴久が迎えに来たのか市が聞くと晴久はちょっとむすっと無言で市の頭を撫でる。
「藍羽さん、市が悪かったな」
「ううん、気にしないで」
「だって、」
「寂しかったら今度俺が送ってくから1人で出歩くな」
「むう」
ぷうっと頬を膨らませる市の頬に指を指して、苦笑いしている晴久は市の手を引いて。じゃあ、また。と頭を下げて百合の家を後にする
手を繋いだまま
車に向かう途中で止まって、顔を上げた市は辺りを見回す晴久に市は首を傾げる
「いや、何でもねえよ」
「? うん」
「帰ろうな」
「うん、ありがと」
車に乗り込むと途中でドライブしていくかと提案をされ、気分が低下してた市は大喜びで顔を上げて微笑んだ。
今度遊びに行くか?2人で。
さり気なくデートの誘いもすれば分かってるのか分かってないのか嬉しそうに返事をされて晴久は少し不安になる。あれ、俺、男として見られてない?
「市は、好きな人いないのか?」
思わず、口に出してしまった言葉にヤバいと思いながら、問うてみればきょとりとした顔で口が開きかけたのを思わず手で塞いでしまった。
馬鹿だ俺ー!と晴久は信号待ちで思い切り項垂れた。
「むぐむぐ」
「…悪い、急に」
「ぷは、いいけど」
俺の馬鹿。自分で言った言葉に真っ赤になりながら脳内でもう少しマシなタイミングで言えば良かったなと。今度ちゃんと言おうと心の中で頷く。
「遊園地でも行くか」
「市、どこでもいいよ?」
「ん、決めたら連絡する」
うん、と嬉しそうに笑う市を家に送り、初デートへのお誘いが成功したとガッツポーズを取って自宅に車を走らせた。