第1章 アネモネの夢00~50
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織田家からお暇して早数日。
通勤が織田のご兄弟誰かと一緒だったのと、帰宅した場所が賑やかな家族が居る場所だったのですっかりとその賑やかさに慣れてしまっていた私は現在寂しん坊です。
いやね、私の家族は健在だし仲は悪くないんですけどね、勤め先が織田グループ傘下の松本社長が率いるあの会社です。
当然ながら都心にあるわけでとてもじゃないけど実家からでは通えませんて。通ってる人は居るんですけどね、電車通勤で二時間とか私は無理。そんな体力ない。
ってわけで、自宅に戻ったらぼっちなんですよ、ぼっち……。
「……寂しい」
一人飯も侘しいので食べる気にならず、かといって食べなければ体力勝負なところがある秘書業はやっていけないので最近は出来合いを買って帰る日々。
エンゲル係数だっけ? 大丈夫かなって思うけど気持ちが落ち着くまでは気にしない。気にしたらダメだ。お給料、お家賃と水道光熱費さえ払えれば後は考えない!
そんなこんなで侘しくご飯を食べるわけですが、明日もお仕事なのでさっさとお風呂入って寝ようと決めて準備して本当に早く就寝した。
にもかかわらず、朝は寝坊しそうなくらいにギリギリな時間に起きたのはなんでかな?!
寂しかったりストレスが溜まると異様なまでに寝ちゃうこの体質を誰か改善してくれないかな! 出社には余裕の時間だけど、眠気が取れるのに時間がかかるんです。寝汚いから。
落ちてくる瞼を必死で開けて身支度を整えて、鞄を持って、お弁当は作る気力と時間がないので持たずに家を出ると電車に飛び乗る。
いつもの出社時間にきちんと出勤してお仕事準備して、朝一番から業務を開始したら少しして雹牙さんが顔を出したのに驚いた。
「あれ? 雹牙さん? おはようございます、どうされたんですか?」
来る予定あったっけ? と首を傾げ社長のスケジュールを確認すれば時間未定で織田グループ本社より来客とメモがあった。
うわぁ、見落としてた! しまったと顔をしかめたけど本日の私の業務は社長付きではないのでセーフです、セーフ。
お休みを取られる部長付きの秘書さんの代行なのですよ。呼ばれたので応対しますけど。