第1章 アネモネの夢00~50
あっさり頷いた雹牙さんが、冷たいって思ってしまったのは内緒だ。
それはともかく、今日は起きたら市ちゃんと一日遊んで、荷物纏めて、明日には自分の家に戻らなきゃ。
昨日のうちに市ちゃんと今日は夜、一緒に寝ようって約束してるから市ちゃんのお部屋でお泊りです。
「あ、百合ちゃん起きたんだ! おはよう!」
「市ちゃん! おはよう!」
雹牙さんと話している間にリビングに来た市ちゃんが声を掛けてきて、私の中で浮かんだよくわからない感情は霧散した。
その後は、飽きることなく市ちゃんとたくさん話して、夕飯の準備も一緒にして、夜もたくさん話した。
翌日はちゃんと早起きして朝から借りていた部屋の片付けを済ませて夕方になる頃、荷物を持って織田家の門前に立った。
「信長様、帰蝶様、お世話になりました!」
「是非もなし」
「またいつでも遊びにいらっしゃい」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、行くか」
「はーい」
早めに帰宅された信長様と帰蝶様に見送られるなんて! 絶対運を使い果たしたよね!
そう思いながらも思い切り深く頭を下げてお礼を言うと、雹牙さんに促されて車に乗り込む。
市ちゃんにまたメールするねと約束して、私は自分のマンションに帰った。