第1章 アネモネの夢00~50
私は彼女の言い分に呆れ、返事を返しながらもどうしたら現状を把握するために周囲を観察する。
私の両手は纏めて拘束されてベッドヘッドに縛られている。足はまだ自由だが、現時点では男がその間に割り込んで結構あられもない姿になっている。
蹴り飛ばして良いかなってチラリと思ったけど、まだ喧嘩を売るには早すぎるなと諦める。
「雹牙様、素敵よね。なんであんたなんかに構ってるのか知らないけど、男の下ではしたなく喘ぐあんたの姿を見たらどう思うのかしらねぇ?」
「あの美人な兄ちゃんか。お前、あの兄ちゃんを狙ってこんな綺麗にしてんのか? あぁ?」
「はぁ……あの人と会ったのは偶然だし、化粧を変えたのはただの気分転換だけど何か?」
「てめぇっ!」
二人して訳のわからないことを喚くので、思わず呆れたため息と共に返したら今度こそ殴られた。
その痛みに生理的な涙が浮かんでくるのを愉快そうに見てくる男に悔しさから睨みつける。
同期も一緒になって嗤ってくるのが腹が立つ。だから思わず、だったけどどうやら同期の地雷だったらしい。
「そんな性格ブスのままじゃ、どう頑張っても雹牙さんの視界には入らないわね」
「っ! あんたっ! ちょっと気に入られてるからって生意気よっ! あんたなんかその男にヤられて雹牙様にも捨てられれば良いわっ!」
カッと目を見開いた同期は、般若の表情でそう叫ぶと元カレに殺さない程度に好きにすればいいと言いおいてどこかへ去っていく。
私はしまったなと思いながら相変わらず卑下た笑みを浮かべ、嬲ろうとする男と対峙する羽目になった。